『三体III 死神永生』(劉慈欣著)を読んだ
ついに読み終わった。三体Ⅲ。
三体シリーズの三作目は上下あわせて1,000ページ近い超大作。Kindle で読んでいたから意識してなかったけど、読み終えて調べてみたらすごいボリュームだった。
一年に一回三体を読む、みたいな流れで思い切って今年の夏に買ったはいいけど、時間があまりとれずに気づけば冬になっていた。でも、今年のうちに読めて良かった。過去二作の感想は↓こちら。
以下、ネタバレあります。
前作で三体世界と休戦協定結んだあと、地球がつかの間の繁栄を享受しているところから話が始まる。なのに、最後まで読み終わってみるといつのまにかすごいところまできてしまう。読み終わりの読了感の重厚さ。これぞ SF だなーという感覚を久しぶりに味わった。
最初の『三体』は SF というよりミステリーに近いよなと思ったし、『三体Ⅱ 黒暗森林』は SF ではあるけど地球(と太陽系)での話がメインだった。それが『三体Ⅲ』の最後は全宇宙レベルの話になっていく。
前作までで「宇宙は各文明が息を潜めて互いに見つからないように隠れていて、発見された文明は音もなく破壊されてしまう」という黒暗森林モデルが語られる。その設定と裏付けの理論とても感心したけど、今作ではそれすら『宇宙の戦争の全体像に比べたら、不注意な敵の伝令とか食糧配給係だかをスナイパーが狙い撃つくらいの話』と一蹴されてしまう。
宇宙全体では超高度な文明同士が神のようなレベルの戦闘を繰り返している。『物理法則こそが攻撃なんだ』と本書で語られるように、文明同士の戦闘によって光速などの様々な物理定数が書きかえらる。そして、その戦闘の結果が今の宇宙の状態だ、と説明される。もともと超高次元だった宇宙がこれらの戦闘によってどんどん低次元に遷移していき、そのうちゼロ次元に到達する。実際、この種の次元攻撃をうけてしまって太陽系は何の抵抗もできずに破壊されてしまう。
太陽系を破壊されたあと、残された数少ない人類の生き残りである主人公達は太陽系を脱出して、他文明が作ったポケット宇宙に移住して、そこで次の宇宙の創世(新たなビッグバン)を目指して170億年を過ごすが、、という壮大な終幕につながる。もちろん、その間にめちゃくちゃいろんな話があるんだけど。
こうやって書いてみるとかなりハードな SF 小説で「三体」や「三体Ⅱ」とは趣が違うなーと読みながら感じていた。これは人を選ぶだろうなーと思ったが(めちゃくちゃ長いし)、あとがきを読むと原著者も同じように思っていたみたい。
いわく、最初の二巻はSFファン以外の一般読者に広く受け入れてもらうべく、現代もしくはそれに近い時代を背景とすることで物語の現実感を高め、SF的要素を現代的なリアリティに立脚させようとした。しかし、はるか未来まで話が広がってしまう本書では、もはやそれは不可能になる。そのため、「出版社とわたしの到達した結論は、第三巻が市場で成功することはありえないので、既存のSFファン以外の読者を取り込もうとするのは諦めるのが最善というものだった。かわりにわたしは、ハードコアのSFファンと自任する自分自身にとって心地よい〝純粋な〟SF小説を書くことにした。そうして自分自身に向けて書いた第三巻には、高次元宇宙と二次元宇宙、人工ブラックホールとポケット宇宙が詰め込まれ、時間線は宇宙の熱死まで伸びていた。
劉 慈欣. 三体3 死神永生 下 (ハヤカワ文庫SF) (p.493). 株式会社早川書房. Kindle 版.
それでも、やっぱり前の二作で作り込まれた土台があったからだろう「三体Ⅲ」もめちゃくちゃ売れたようだ。さすがだね。
自分はたくさんの SF 小説は読んだことないけど、やっぱり SF が好きなんだよなー。結局、小説は SF ばっかり読んでるからな。。。Netflix の三体はまだ見てないから見よっと。
あとがきにも紹介されていたけど、この書評がとてもよかった。こういうのを見ると、自分がブログで感想を書く意味なんて特にないよなと思ってしまうのが難点だが、、、。
序盤の生物と物理法則の話とかそういうことか、みたいなの改めて理解しました。ありがとう。