2026Q1
気が付けば今年もあっという間に3か月が過ぎてしまった。
転職した
1月から新しい会社に勤めてる。転職といいつつ社内制度を利用したグループ会社への転籍だから、世間一般の「転職」とはだいぶ違うかな。知り合いもそれなりにいる。でも、雇用契約は巻き直しだったので公的には転職。健康保険組合も変わって、一時的にマイナ保険証が使えなくて不便だった。オフィスが違うからなのか、文化もけっこう違うし環境の変化はそれなりにあった。
転籍した理由はいろいろあるけれど、40歳目前にしてそろそろソフトウェアエンジニアとして錆びてくる部分が出てくるなと思っていた。それに抗うための一番の方法は環境を変えることだと思った。会社を変える方法以外にそれを回避する手段はあったのだろうけど、会社を変えるのが一番効率のいい手法だと思ってるし、これまで経験もそれを肯定していたから。とはいえ、子育て中のサラリーマンが全く知らない新しい会社に飛び込むのはいろいろとハードルが高く、ある程度は転職先の状況が読めるこの形に落ち着いた。
いくつか変化はあったが、より AI に近いところで仕事できるようになった。前職でも AI は使っていたけど、今の会社は事業自体が AI 前提で、プロダクトも AI がなければ成立しない。それは求めていたものであったから、ありがたいものであったが、改めてソフトウェアの世界が変わっていくのを目の当たりにする毎日である。
転職して LLM の知識はだいぶついた。もともとこの分野の知識はかなり薄くてキャッチアップのために『LLMの原理、RAG・エージェント開発から読み解く コンテキストエンジニアリング』と『Agentic AI Course』 がとても役立った。Machine Learning, Deep Learning に引き続き、Andrew 先生にはまたお世話になった。


Agentic Coding
でも、一番変わったのは自分の開発スタイル。入社後はほぼ Claude がコードを書いている。自分でコードを直接書く機会は本当になくなってしまった。前職の最後のほうはコードを書く機会がそれほど多くなかったせいもあって、まとまったコーディングを AI にお願いする機会があまりなかった。ドメイン知識の深い歴史のあるコードを調査して、少し手直しするというような仕事が多かったせいかも。現職では新しいプロダクトやモジュールを作る機会も多くなり、なるべく全部 Claude Code でやろうと決意したら、あっという間に全部 Claude が書く状態に落ち着いた。
まだ Claude を大量に並列動作させるワークフローは習得していない。2, 3 並列で作業させるくらいが意味を感じる限界。そういう意味では並列性によって生産性が劇的に高まっている感じはしない。人によっては tmux で超並列に作業をしてるらしいけど、自分にはできる気がしない。それにそのやり方が自分に職業上の満足度を与えてくれそうな気もしない。
大きな変化は、コードを書くという集中が必要な作業がなくなることで、自分のエネルギーが減りにくくなった。結果、Claude と一緒にいくらでもモノをつくれるようになった気がする。以前まであった「さすがに疲れたし、今日はたくさんコードを書いたからやめよう」という感覚も薄くなり、夜や休日にいくらでも作業できる感覚がある。アイディアがある状態で Claude に作業を投げてない時間(夜や休日)を惜しく感じてしまう。そしてこれも生活上いいことなのかは微妙なところ。楽しいんだけどね。
アイデンティティのはなし
15年くらいコーディングを生業にしてきて、この3か月でそれがほぼなくなってしまったわけだけど、今のところ不思議とアイデンティティを喪失した感覚はない。最近、Andrej Karpathy が Agentic Coding への感想をポストしていたけど、同じような感想を抱いた。
A few random notes from claude coding quite a bit last few weeks.
— Andrej Karpathy (@karpathy) January 26, 2026
Coding workflow. Given the latest lift in LLM coding capability, like many others I rapidly went from about 80% manual+autocomplete coding and 20% agents in November to 80% agent coding and 20% edits+touchups in…
I really am mostly programming in English now, a bit sheepishly telling the LLM what code to write... in words. It hurts the ego...
そう。やってることは Claude にやってほしいこと・意図を日本語で伝えることだけになってる。もうコードを正確に書く能力は AI にはかなわない。一度にコード量が圧倒的だし、彼・彼女はあきらめることを知らない(お金を積めばだけど)。そして、それは確かにほんの少し自分の自尊心を傷つけるし、ふとしたときに「もうコードを必死に書くことはないのだろうなぁ」とさみしく思うときもある。夜通しコードを書いたあの経験を味わうことはないだろう。
でも、数年前から Copilot の AI 補完をたくさん使ってきたし、自分でコードを全部書くみたいなことは長い間やってない気もする。競技プログラマーみたいに精度の高いコードをがしがし書く能力は持ってなかったから、そういう状況をけっこうすんなり受け入れられたのかも。
あと、自分は「専門的能力が強い Software Engineer」より、「ジェネラリスト的な Software Engineer」だと思ってるから、Agentic Coding のおかげで「できること」、「やろうと思えること」が以前よりも格段に増えたように感じる。Karpathy はそれを “So certainly it's speedup, but it's possibly a lot more an expansion.” と表現していた。
そういえば、「ジェネラリスト的な Software Engineer」という話を少し前に書いたなと思って昔のブログをあさったら5年以上前であった。
自分のキャリアをポジティブに捉えるのならば、ずっと「ソフトウェア開発」には携わってきたわけで、それを軸にして時代に合わせた技術を習得すればよいのではないか。 勉強を続けなければいけないことは大変といえば大変だけど、この仕事は今でも楽しいと思えるのでそれほど苦にはならなさそうだ
自分のアイデンティティはコードを書くというよりは、ソフトウェアで何かを作るところにあるのかもしれない。コードの勉強はするし、これからも趣味や勉強でコードは書くかもしれないが、結局、何かソフトウェアをつくっていって、それが何か人の役に立つ、すごいねと言われることが好きだったってことかもしれない。
昔、映画の中にでてくるハッカーたちに憧れたけど、結局、「何か頼られて Cool にソフトウェアで解決する」というところがかっこよかったのかもしれない(解決というより大抵は侵入だったけど…)。でも、大量のディスプレイにたくさん開いたターミナルで Claude Agent に指示を出す姿は、まさに昔憧れたハッカー像に近いかもしれない。やはり、そこを目指すべきか?